大小の向きから複素数で使える不等式の入り口へ招待

不等式

複素数では大小比較ができない事を説明しましたが、その中で重要な前提条件を仮定しているにもかかわらず、省略していました。

その前提条件とは、

二つの実数x,yを大小比較すると、

  • x=y
  • x<y (x≠y)
  • x>y (x≠y)

のいずれか一つだけが成立するという前提です。

この前提があるからこそ、0と虚数単位のiの比較をした時に上記の3パターンのいづれでも矛盾をきたすから比較はできないという結論が得られるのです。

逆に言うと、この前提をなくせば、複素数でも大小の比較は可能であるというのが、これから記述する内容です。

実数の向き

実数に関しては、正の向きと負の向きの2方向しかありません。

極限についても、右極限と左極限にしか分離できません。

近づく方向が右からか左からかどちらかしかないからです。

実数の向きは2方向しかないため、もし比較する実数が等しくないとしたら、大小の2関係のいずれが定まります。

これが実数の大小関係が2つの排中律で成立可能にしている理由です。

複素数の向き

実数の向きが2方向しかないのに対して、複素数の向きは360度全方向に向きがあります。

これが実数の不等式と複素数の不等式の大きな違いです。

これによって、複素数の場合、大小関係が360度方向にありますから、大小関係の方向も360度の向きに対してあります。

したがって複素数の不等号は2種類では足りません。

360度の向きは無限に存在しますから、複素数の大小関係を表す記号も無限個必要になってきます。

この事が複素数に不等式を導入するための条件となります。

複素数でも使える不等式の簡単な例

それでは、最も簡単で実数の不等式とは異なる例として、ゼロと虚数単位iを取り上げこれらの比較が複素数での不等式でどう表現されるか示します。

肝になる考え方は、0と虚数単位iの比較は、右か左かではなく、上か下かの比較しかできないと考えることです。

上か下かで考えることで、複素数でも純粋な不等式を定義することができます。

上か下かしか比較できないものを、右か左かで表現しようとする実数の不等式では矛盾が生じるのは当然の成り行きです。

上と右、もしくは左は全く方向が違っているからです。

改めて、ゼロと虚数単位iとの大小は上か下かで比較されます。

すなわち、虚数単位iはゼロよりも上に大きいと表現するのが複素数でも使える不等式です。

あるいは逆向きにすると、虚数単位iはゼロよりも下に小さいと表現します。

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